上方浮世絵館では、江戸時代の大阪で作られていた浮世絵を展示しています。大阪の浮世絵は役者絵が多いことが特徴です。その役者絵には、道頓堀で上演されていた歌舞伎芝居に出演する役者たちが主に描かれました。
役者絵は、役を演じる役者たちの姿が中心となりますが、芝居の背景となる大道具、役者たちの衣装や小道具など、舞台の様子も細やかに描かれます。多色を用いる浮世絵版画の特色をいかし、当時の華やかな舞台の様子をうかがうことができます。特に衣装や小道具は、当時の身分や役柄に合わせたものが用いられ、芝居の世界観をあらわしています。
そこで今回の展示では、芝居に用いられる小道具の中でも「扇」に注目します。風を送り涼をとる役割だけでなく、舞踊の中で盃に見立てたり、口元を隠す仕草に、あるいは武将が軍勢を指揮するアイテムにと、さまざまに用いられます。それぞれの役柄において「扇」がはたす役割から、芝居の醍醐味をどうぞご覧ください。