幕末の動乱とみる上方浮世絵
2010年8月31日〜12月5日
上方浮世絵とは、江戸時代後半から明治初期の大阪で制作された浮世絵です。その多くは、道頓堀を中心とする歌舞伎芝居に出演する役者がえがかれ、当時の芝居の様子を伝えてくれています。
つまり、上方浮世絵には人気役者や芝居という、当時の娯楽がえがかれているといえるでしょう。しかし、江戸時代後半から明治初期といえば、幕末の時期と重なります。長らく続いてきた徳川幕府の終焉から明治維新の足音が聞こえてくる頃です。
そこで、今回の展示は、歴史が動くその時に、道頓堀ではどのような芝居が行われていたかに注目します。幕末の混乱をくぐり抜けてきた浮世絵を、事件や出来事の年代と照らして、どうぞご覧ください。
慶応3年(1867)に大政奉還され、慶応4年9月に“明治”へと改元された後、江戸城が皇居として定められ、都が京都から東京へと移ることとなります。
明治維新のさなかも、上方浮世絵は制作されましたが、次第に衰退へと向っていきます。
上方浮世絵は、天保の改革以後、一枚の浮世絵の大きさが、それまでの半分ほどの判型が主流となります。天保期以前と幕末の浮世絵それぞれを見比べると、その大きさとともに、使用されている色の変化も感じられます。
今回の展示では、幕末の時代の変化の中、どのような浮世絵が制作されていたかに注目しましたが、上方浮世絵の世界におこった変化にも、ぜひご注目ください。
芳瀧 画
明治5年(1872)1月 筑後芝居
『契情曽我裾野誉』
大谷 友右衛門5 … 鳴戸深丸
嵐 璃寛4 … 曽我五郎
宗広 画
安政5年(1858)1月 中の芝居
『けいせい雪月花』
尾上 多見蔵2 … 石川五右衛門