上方浮世絵館では、おもに江戸時代の大阪で制作された浮世絵を展示しています。大阪で作られた浮世絵のほとんどは、道頓堀などの歌舞伎芝居に出演する役者たちが描かれた役者絵です。当館周辺は、浮世絵に描かれた役者たちがうみだす活況に満ちていたといえるでしょう。
歌舞伎が独特の演劇として位置づけられる要素の一つに、女性役をふくめすべての役を男性が演じる点があげられます。男性が女性を演じる女方が誕生し、その役柄への追求から日常生活においても女性として過ごした役者もいました。ところが、江戸時代後半ごろには、男女の役に関係なく役柄を演じ分けることができる“兼る”ことが評価されるようになります。
そこで今回の展示では、男女それぞれの役を一人の役者が演じることに注目します。役柄を演じ分けるという役者たちの追求によって、観客は役者の多様な演技を楽しむことができます。“兼る”役者たちの姿を、どうぞご覧ください。