第97回企画展

【浮世絵でつづる「道頓堀ものがたり」】
第97回企画展 2026年3月3日(火)〜2026年5月31日(日)

上方浮世絵館は、江戸時代の大阪で出版されていた浮世絵を展示する美術館として、2001年4月28日に開館いたしました。大阪の浮世絵とは、おもに道頓堀で上演されていた歌舞伎に出演する役者たちを描いたもので、当時の舞台の様子を伺うことができます。

開館より25周年をむかえ、3ヶ月ごとに行っている歌舞伎や浮世絵にまつわる企画展はもうすぐ100回を数えようとしています。上方浮世絵館は、江戸時代から芝居町として栄えた道頓堀に近く、上方浮世絵ゆかりの地ともいえる場所にあるため、歌舞伎や浮世絵ファンの方をはじめ多くの方に訪れていただいています。

そこで今回の展示では、25年の間に行った上方浮世絵館の企画テーマやエピソードを紹介しながら、道頓堀にまつわる浮世絵に注目いたします。道頓堀から歌舞伎芝居のともしびが消えゆくなか、江戸時代からの芝居町の記憶を伝える展示となれば幸いです。

芳雪 画「川竹乗込賑」



道頓堀の芝居小屋
江戸時代に入り、安井道頓が私財をつかって開削した運河は、道卜によって完成し、道頓堀と名付けられました。1652年(承応元年)、道頓堀の芝居に名代(興行権)が制定され、「中の芝居(中座)」「角の芝居(角座)」をはじめとする劇場が集められ、芝居町として発展します。
開館当初から行ってきた道頓堀の劇場についての企画は、芝居町としての道頓堀の賑わいを紹介する企画でもありました。なかでも大芝居と呼ばれる歌舞伎の二大劇場であった中の芝居(第9回)や角の芝居(第32回)の企画は、上方浮世絵を語る上でも欠かせないテーマであるといえるでしょう。
「大阪芝居地図めぐり」(第80回)では、大阪には「中芝居」や「濱芝居」とよばれる「大芝居」以外の劇場もあり、それらは北新地や堀江など道頓堀ではない地でも興行を行い、安価で気軽な娯楽として栄えた様子を紹介しました。

大阪松竹座とのご縁
「大阪松竹座」は大正12(1923)年に大阪初の本格的な洋式劇場として、創建されました。映画上映だけでなく、松竹楽劇部(後のOSK日本歌劇団)や歌舞伎のほか、さまざまな舞台芸術がかけられてきました。戦時下では大阪大空襲にも耐え、「平成の大改修」を経て新築再開場したのちの賑わいは、みなさまご存知の通りです。
ここでは歌舞伎上演の際に、上方浮世絵館の浮世絵と結んでいただいた縁を紹介し、「大阪松竹座」の閉場を惜しみたいと思います。

「伊賀越乗掛合羽」
2023年7月の七月大歌舞伎公演「伊賀越道中双六 沼津」の参照浮世絵として紹介
「川舟の月」
2021年7月の七月大歌舞伎公演の番付表紙に
「夏祭浪花鑑」
2004年10月の訪米歌舞伎凱旋公演十月大歌舞伎公演の番付表紙に
「三人万歳新玉筆」
2005年1月の壽初春大歌舞伎公演の番付表紙に

道頓堀で活躍する役者たち
道頓堀で活躍する人気役者はすなわち上方浮世絵に多く取り上げられる役者であるとも言えます。これまで上方浮世絵館では、第7回「三代目中村歌右衛門の世界」をはじめとして、上方浮世絵を語る上で欠かせない役者たちを取り上げた企画を行なってきました。なかでも三代目中村歌右衛門一門を取り上げた企画が多く、第26回には「初代市川鰕十郎の役者絵」、第42回には「四代目中村歌右衛門」、第35回では「二代目中村富十郎」など、上方浮世絵に多く描かれた役者の名が並びます。
また、幕末期に活躍する実川家の代々をとりあげた第70回や、明治維新以後も活躍する二代目尾上多見蔵に注目した第58回もあります。さらには江戸の役者たちを取り上げた回もあり、道頓堀の歌舞伎には、多くの人気役者が出演していたことを物語っています。

道頓堀にまつわる浮世絵
江戸時代、道頓堀は芝居小屋が集められ、芝居茶屋が並び、役者たちの住居も程近く、一大芝居町を形成していました。官許の芝居の象徴として櫓があがり梵天が掲げられた様子は、浮世絵を見ているだけで、囃子などの音曲や人々の喧騒が聞こえてくるようです。
上方浮世絵は役者絵がほとんどを占め、道頓堀の風景を描いたものは多くありません。しかし、道頓堀の歌舞伎芝居の風景は大阪の名所であり、役者たちの背景として描かれていることも多くあります。ここでは、道頓堀の賑わいをみせる浮世絵を取り上げ、かつての風景を巡らせていただければと思います。

「ちょっと一服ええ遊び 江戸時代の京・大坂娯楽案内」
20025年12月におこなわれた、龍谷大学博物館実習展にて紹介されました。道頓堀の芝居町を取材した学生による浮世絵展示に協力しました。

おわりに
おかげさまで開館25周年を迎えることができ、これまでご協力をいただきました関係各位には改めて御礼を申し上げます。また、これまでご来館いただいたお客様にも感謝を申し上げます。これからも上方浮世絵の魅力を伝えるべく企画展示してまいりますので、上方浮世絵館にご厚情を賜りますようよろしくお願い申し上げます。