第96回【浮世絵掃苔録】

上方浮世絵館では、江戸時代の大阪で出版されていた浮世絵を展示しています。大阪の浮世絵は、おもに道頓堀で上演されていた歌舞伎に出演する役者たちを描いたもので、舞台の様子や役を演じる役者の姿を見ることができます。

タイトルの「掃苔(そうたい)」とは、墓石の苔をきれいに取り去ることを指し、転じて墓参りの意を持ちます。現代においても、歴史上の偉人や有名人の墓を訪ね、故人を偲びその人生に思いを馳せる文化は受け継がれています。とくに名跡を襲名しその名を継ぐ歌舞伎役者にとって、墓所は先祖と対面できる重要な場といえるでしょう。

そこで今回の展示では、大阪に墓所や記念碑がある役者たちを取り上げ、浮世絵に描かれた姿ともに紹介します。ありし日の役者たちの姿を浮世絵でご覧になり、墓所を訪ねてその活躍に思いを馳せてみてください。役者絵鑑賞の一助としていただければ幸いです。