第92回 【敵役の魅力】

上方浮世絵館では、江戸時代の大阪で出版されていた浮世絵を展示しています。大阪の浮世絵は、道頓堀を中心に上演されていた歌舞伎に出演する役者たちを描いたものが多くを占めます。

歌舞伎の演技には、立役か女方か、敵役か道化方か、荒事か和事かなど、さまざまな決まりごとである役柄があり、役者たちはその役柄をふまえた演技が求められます。男性役者が老若男女を問わず演じる歌舞伎では、役柄は観客側にとっても重要な鑑賞ポイントでもあります。なかでも敵役が痛快に成敗されるストーリーは、歌舞伎には欠かせない設定です。

そこで今回の展示では、悪人を演じる役である「敵役」にまつわる芝居に注目します。敵役は、悪事の内容や身分によって分類されます。また、本当に憎らしい役もあれば、敵と思いきや実は…という本心が隠された役など、敵役もさまざまです。スター役者が演じる主役を引き立て、芝居を盛り上げる敵役の魅力を、役者絵でどうぞご覧ください。

第92回企画展