上方浮世絵館では、江戸時代の大阪で作られた浮世絵を展示しています。大阪の浮世絵は、道頓堀で上演されていた歌舞伎に出演する役者を描いた役者絵が多いことが大きな特徴です。
江戸時代の歌舞伎は、上方と江戸の二大都市を中心に発展し、賑わっていました。上方と江戸の歌舞伎には、それぞれに興行の方法や演技の特性などがみられます。とくに江戸の豪快な「荒事」の演技と上方のやわらかな「和事」の演技は、その違いがよく比較されます。しかし東西の間では交流があり、江戸の「中村座」などへ、道頓堀を拠点として上方を中心に活躍していた役者たちも出演しました。そしてその様子は江戸の浮世絵師たちによって描かれています。
そこで今回の展示では、江戸の浮世絵師「歌川豊国」がとらえた上方の役者たちを展示します。道頓堀を代表する三代目中村歌右衛門らが、豊国にどのように描かれたかに注目します。あわせて、道頓堀の芝居へ出演する江戸の役者たちが、大阪の絵師たちにどのように描かれたかにも注目します。東西の絵師たちの描き方の違いを、どうぞ比較してご覧ください。