第95回【四天 −衣裳と役柄–】

上方浮世絵館では、江戸時代の大阪で出版されていた浮世絵を展示しています。大阪の浮世絵は、おもに道頓堀で上演されていた歌舞伎に出演する役者たちを描いたもので、舞台の様子や役に合わせた衣裳で演じる姿を見ることができます。

歌舞伎の衣裳は役をあらわすだけでなく、舞台上をはなやかにいろどってくれます。花魁の重厚な俎帯や打掛、深窓の姫の豪華な振袖は観客を魅了し、武家の正装である裃や素襖は庶民を別世界へ誘います。なかには、歌舞伎の衣裳として独特の発展をとげた「小忌衣(おみごろも)」のようなエキセントリックなデザインも見ることができます。

そこで今回の展示では、歌舞伎独特の衣裳である「四天(よてん)」に注目します。捕手や軍兵などの大勢が揃いで着るものから、「馬簾(ばれん)」のついた豪奢なものまで、浮世絵を通してご覧いただきます。歌舞伎の衣裳から、当時の舞台のはなやかな色彩をどうぞお楽しみください。