第86回 【旅する芝居の楽しみ】

上方浮世絵館では、江戸時代の大阪で出版されていた浮世絵を展示しています。大阪の浮世絵は、主に道頓堀で上演される歌舞伎芝居を描いたもので、役者絵がほとんどを占めています。

江戸時代の道頓堀は、歌舞伎や人形浄瑠璃などの芝居小屋のほか、芝居茶屋などが立ち並ぶ娯楽の町として、多くの観客で賑わう場所でした。江戸時代後半には「伊勢参り」をはじめとする「旅」が盛んとなりましたが、多くの人々にとっては、まだまだ手の届かないあこがれの「旅」。なかなか「旅」に出ることのできない庶民にとって、浮世絵や歌舞伎芝居はあこがれの「旅」を疑似体験ができたことでしょう。

そこで今回の展示では、旅姿や旅立ちの場面など、旅する芝居に注目します。旅の途中、幼い頃に生き別れた親子が出会う「沼津の段」が見どころの『伊賀越乗掛合羽』の他、役者たちが旅姿でおりなす芝居を、浮世絵でどうぞご覧ください。